GMPとHAPPCは何が違う?【わかりやすく解説】

品質保証・品質管理

医薬品や化粧品、そして健康食品の製造の要件をまとめたGMP(Good Manufacture Practice)と、一般的な食品の衛生管理手法であるHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)は、どういう考え方の違いがあるの?

こんな疑問をお持ちの方向けに、カンタンに両者の違いをご紹介します。

アルファベットだらけで分からなくなってしまいがちですが、両者の成り立ち(GMPやHACCPが作られた背景)を理解すると、違いが見えてきます。

「GMPの方が上位の管理なので、HACCPではなくGMPだけ取り組んでおけば問題ないだろう」、と考える人がいますが、注意点についてもご紹介したいと思います。

GMPとは

GMPの概要

GMPは「医薬品の製造管理及び品質管理の基準」と表現され、文字通り元は医薬品の製造・品質を管理するための手法です。

医薬品は、病気の治療や予防に用いられるもので、使用することで何らかの効果が期待されています。 つまり、薬(くすり)が定められた品質規格に適合していることはもちろん、適切に製造管理されなくてはなりません。

工場でのちょっとしたミスによって、効果が無い薬、あるいは毒が作られてしまうからです。

そのため、GMPでは三原則として、

1. 人為的な誤りを最小限にすること
2. 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること
3. 高い品質を保証するシステムを設計すること

この三つを要件とし、さまざまな基準を定めています。

超簡単に表現すると、工場で誰が作業をしてもミスが起こらない環境・手順を作りましょう、という事です。

GMPの成り立ち

GMPは1963年にアメリカではじめて法制化されました。

この背景にあったのは、製薬会社によるずさんな製造管理・品質管理のために、多くの薬害(低品質・悪質な薬によって、健康危害につながった事故)があったためです。

こういった背景から、各国挙げての薬の適性規範としてGMPの考え方が世界中に広まりました。

健康食品は「医薬品」ではなく「食品」ですが、健康食品GMPで管理することがガイドラインで求められています。

ここで言うGMPで管理すべき健康食品の定義は、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤などの形状です。

これら剤形がGMPで管理する必要があるのは、

  • 外観・味・においから製品の内容・状態を判断できないこと(腐っていたりしても、気が付かずに飲んでしまうこと)
  • 原材料に問題がなくとも、濃縮や抽出の工程があり成分のかたよりが生じることがあること
  • 濃縮・抽出の工程があることから、必ずしも安全性が保証できないこと(効果が出すぎてしまったり、逆に期待される効果が得られないこと)

といった、医薬品と似た側面があるためです。

HACCPとは

HACCPの概要

対してHACCPは、食品の品質を脅かすリスクのうち、健康危害につながる3つのリスクに焦点をしぼって製品の安全性を確保する衛生管理手法です。

健康危害につながる3つのリスクとは

  • 微生物的危害:カビ・細菌 等
  • 物理的危害:ガラス、石、プラスチック片、などいわゆる異物 等
  • 化学的危害:薬品 等

生産工程の中でこれら3つの危害につながる工程を重点的にモニタリング・管理することで、問題があったときにはすぐに生産をストップし不良品の出荷を防止するとともに、工程の見直しを行うのがHACCPの目的です。

なぜ食品ではHACCPが用いられるかというと、食品は多種多様な形・食感・香り(におい)・味があります。この多種多様であるという点が、医薬品とは大きく異なります。

食品は単に摂取するだけが目的ではなく、味や食感を楽しむことが期待されるからです。

当然、様々な形・ジャンルのものの品質を均一にすることはできません。

お刺身、チョコレート、てんぷら、レトルトカレー、同じ製造工程・品質基準を定めることはできません。

そのためHACCPでは健康危害に直結する3つに重点を置き、多種多様なものでもコストをかけ過ぎず、かつ安全(健康危害につながらない)なものを生産することを主眼においています。

HACCPの成り立ち

HACCPはNASA(アメリカ航空宇宙局)で考えられた手法です(あの、ロケットのNASAです)。

宇宙空間(ロケットの中)には医者がいないので、航空中に宇宙飛行士が食中毒になったら大変です。そこで、安全な宇宙食を提供するために、製品の品質保証をするためのシステムとして考案されたのがHACCPです。

カンタンにまとめ:GMPとHACCP

誤解を恐れず、簡単に表現するとこのようになります。

GMP:絶対に安全で、確実な配合割合の薬を作るための考え方。

HACCP:多種多様な食品を、経済的に、健康危害がつながらないように作るための考え方。

GMPとHACCPはどちらが優秀?

上述したとおり、GMPとHACCPでは優先順位の付け方に違いがあり、どちらが優れているという事はありません。

当然、医薬品を管理するGMPの方が、工場での厳しい管理を求めます。 一見すると、GMPの方がHACCPよりも上位だと誤解してしまうかもしれません。

一方で、厳しい管理をするということは、それだけコストがかかるという事です。

食品もGMPで管理しようと思えばできますが、その分コストが跳ね上がります。

今はコンビニでジュースを買おうと思えば100円足らずで購入できますが、GMPで食品の製造・品質管理をするとなればその倍、もしくは10倍、あるいはそれ以上の価格になってしまいます。

さいごに

本日はGMPとHACCPについてご紹介しました。

両者の違いを理解し、適切妥当な品質・コストのバランスで、お客様に製品を提供するのが品質保証活動です。

もっと品質保証の仕事が認知され、リスペクトされる日が来ますように。

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