新製品の初めての生産、いわゆる初回生産(初回製造)。(First Runや、Initial Productionなんて呼ばれたりもします。)
品質保証部門や開発部門が工場に行き、製造現場で問題なく生産できているかどうかの確認をすることがあると思います。
立ち合いの目的はズバリ、
- 最初の生産を現場で確認し、課題があればすぐに解決する。
- 自分で判断できない時は、社内の決裁者(や上司)に状況を正しく説明する。
これです。
本日は、初回生産に立ち会う時の心得・準備をご紹介したいと思います。
✅この記事を書いているのはこんな人です
僕は約10年間、食品製造業(食品メーカー)でモノづくりを経験しており、そのうちの大部分を品質保証部門でキャリアを積んできました。
新卒で日系の大手メーカーに入社。
その後、複数回転職。 外資も経験。
キャリアのほとんどが品質保証。 製造・開発の知識を活かし、「品質」で経営貢献できるのが品質保証という仕事の魅力だと思っています。
◆本日のお題:初回生産立ち合いの心得【品質保証】
事前準備編
工場までの道のりを確認
まずは、工場に行くための道のりを調べておきましょう。
道に迷うと焦ってしまい、落ち着いた精神状態を取り戻すのに時間がかかって立ち合いどころではなくなってしまいます。
これまでの試験結果を確認
ラボ試作中や、実機試作(テスト生産)の時の報告書を読んでおきましょう。
特に、試験で見つかった課題とそれに対する対策がちゃんと整理されているかを確認しておきます。
例えば、「テスト生産の時には機械の設定が十分でなく、調整が必要であった」といった記録があれば、初回生産の前に調整が完了しているか必ず事前に確認しておきましょう。
サンプル(コントロール品)
本生産でつくったものが正しくできているか、その比較対象となるサンプルを準備します。
可能であれば、試験品・ラボ試作品のサンプルを工場に送付しておきましょう。もしくは当日持参しましょう。
規格書(仕様書)
初回生産で使用される規格書(仕様書)を読んでおきます。
工程図や、定められた物性・品質規格、試験法をなるべく頭に叩き込んでおきましょう。
書類は製造現場に持ち込めないことがあったり、現場で立ちながら文字を読むのが難しいことがあります。
事前に、現場に持ち込めるものがあるかどうかも、工場に聞いておくとよいです。
類似製品の実績の確認
これまでの類似製品の生産実績、初回生産の時の報告書などを読んでおきます。
現場でトラブルがあった時に、これまでに似たようなことが起こっていれば、速やかに対策できるようになります。
報告書作成の準備
立ち会う前から報告書?って思うかもしれません。
でも、事前に書けるところは書いてしまう事をお勧めします。
社内の報告書のフォーマットを確認することで、立ち合い当日に確認すべきことを事前にイメージできるからです。
当日編
オープニング
工場の人と立ち合い者でオープニングミーティングを行います。
工場で作っている製造現場向けの工程図や記録表があれば、当日確認しましょう。
立ち合い者がだれか、氏名・部署・役職なども確認しておきましょう。報告書が書きやすくなります。
現場
使用する原材料のロットや賞味期限、保管方法が定められた通りになっているか確認します。
また、試験と違う工程・試験方法になっていないか確認します。事前に確認しておいた規格書(仕様書)と照らし合わせて、細かくチェックしましょう。
設備に異常がないか、異音・異臭が発生していないか、明らかに不良品が作られていないか、現場を観察します。
不良率が大きいようであれば、その原因と数値を現場の人と確認しましょう。
許可が下りれば、カメラなども活用し、立ち会っていない社内の人にも後日状況を伝えられるようにしておきましょう。
意外と、現場のことって忘れてしまいがちなので、気が付いたことは必ずメモ・撮影で記録しましょう。
出来上がったモノの品質
生産されたモノが正しい品質になっているか、事前準備したサンプルや規格書と照らし合わせて確認します。
物性・官能・外観、くまなくチェックしましょう。
クロージング
生産が安定していることを確認できれば立ち合いは終了です。
クロージングミーティングで、課題があったのかどうか、有ったのであれば対策が可能かどうかを、工場の人と議論します。
また今後も継続的に安定して生産が可能か工場の人の見解を伺いましょう。
番外編
帰宅しながら、社内報告の心づもりを始めておきます。
翌日は上司から必ず「昨日の立ち合いどうだった?」と聞かれます。
簡潔に答えられるよう準備しておきましょう。
まずは、一言でその生産がどうだったのか要約できるとよいです。
- 「包装工程で調整が入って一時ラインがストップしましたが、その後問題ありませんでした。」
- 「調合工程で一部沈殿が見られたのですが、同行した開発部門に確認してもらい問題ない範囲だと思います。念のため、最終的な回答を本日もらう予定です。」
このような感じでまずは、当日の状況を簡潔に回答できるとよいですね。
問題があったのか無かったのか、問題があったとすればいつ頃解決する見込みなのか、が伝えられれば上司も安心するはずです。
最後に
初回生産に関わらず、工場での生産立ち合いは緊張しますよね。
立ち合いは事前の準備が9割です。ちょっとでも懸念があれば事前に確認・相談しておきましょう。
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