本日のテーマはOEM*生産における品質保証です。(*OEM: 製造委託、Original Equipment Manufacturer)
自社で工場を持たないファブレス企業や、工場を持っているけれど一部の製品の生産を外注する場合において、OEMと連携して製品の品質を作り込んでいかなくてはいけません。
ところが、OEM生産品の品質がなかなか上がらない(品質が悪い)というのはファブレスメーカーあるあるではないでしょうか。
僕自身、自分のキャリアの中で30社以上のOEM工場との開発・生産委託経験があるのですが、本日は自分自身が経験したOEM生産品の品質がなかなか上がらない(品質が悪い)ケースの主要因をご紹介していきます。
品質が悪いケース①:そもそも委託できる準備ができていない(自社の問題)
OEM生産品の品質が悪い時の要因の一つ目が、そもそも委託する準備ができていないケースです。
「自分たち自身でどんな品質のものを作りたいか」言語化できていなかったり、
部署間(マーケティング、営業、製品開発、購買部門、品質保証部門)でイメージする出来栄え品質が違う場合です。
例えば、マーケティング部門や購買部門は少しでも「安く作りたい」、製品開発部門はなるべく「早く作りたい」、でもお客さんのところに売りに行く営業部門はなるべく「高品質のものを作りたい」、といった製品の品質に対する期待がバラバラになっていることが、本当によくあります。
よくある「社内で要求品質のイメージがバラバラ」の例:
- マーケティング 「利益率を上げたいから、品質はそこそこにして原価率を抑えたい」
- 購買部門 「製造原価を少しでも下げたい」
- 製品開発 「開発のリードタイムを上げたいから、すぐに生産できる工場にお願いしたい」
- 営業 「売り上げを上げたいから、リピート買いしてもらえるように高品質のものを提供したい」
OEMと開発のための打ち合わせをするときにも、関連部門が全員出席できない場合があったりすると、統制が取れないことが多々あります。
それぞれの部署がそれぞれ好き勝手なことをOEMに要求してしまったり・・・
購買部門が自社の要望を取りまとめて、OEMとの窓口業務を徹底してくれる場合ならまだしも、各部門が直接OEMとコンタクトをするようだと、特に注意が必要です。
このように、委託する自分たち(ブランド側)で、何を要求品質としているか定義できていないと、当然 委託を受ける側(OEM工場)もどのくらいのレベルの品質管理をしなくてはならないのかわかりません。
こういうケースの場合、価格や納期と違って数値化が難しい品質はおざなりになってしまいがち。
品質保証部門は、何をどんな品質で作りたいのか、社内で統一見解が取れているのかどうかをしっかりと注視しましょう!
品質が悪いケース②:OEMへの情報伝達が下手(自社の問題)
2つ目は、OEM工場への情報伝達に課題があるケースです。
求める品質・規格・機能の情報がばらばらと伝達され、次から次へと更新・変更されたりすると、受け取り側のOEMも自社の関連部門もどれが最新版なのかわからなくなってしまいます。
品質・規格などの情報は人から人へ伝えられますが、情報は伝達される過程で抜け落ちてしまったり、誤って理解されたりします。
例えば、製品開発部門からOEMの営業窓口、OEMの営業窓口からOEMの生産部門へ、OEMの生産部門から海外の工場へ、と情報が伝達されていく中で、技術的な細かい内容が分からない人同士でコミュニケーションされたり、言語が変わることで微妙なニュアンスが変わってしまう。
これを防ぐために、「文書化」がカギとなります。
メールや電話やチャットのみで情報が伝達されると、タイムラグがあったりして、どれが最新の情報かわからなくなってしまいます。
出来上がった品質のスペックが更新されていない。工場に伝わっていなかった!なんてことになりかねない。
都度、変わった情報を更新していくは面倒ですが、常に文書化してコミュニケーションしましょう。
文書化する際には、ファイルの件名(タイトル)も注意深く設定しましょう。
ファイルタイトルは安易につけてはいけません!
件名が「メモ」とか「品質に関して」などといった、開いてみないと内容が分からないタイトルだと、重要なものだと認識されずに伝言ゲームの中で添付漏れ・伝達漏れが発生してしまうためです。
品質に関するファイルのタイトル(件名)としては
ファイルタイトルのダメな例:
・ファイルを開かないと書かれていることが分からないもの。
例えば、「品質関連」「メモ」「(製品名のみ)」のもの。
・ファイル名の日付が更新されていない古いもの。
ファイルタイトルの良い例:
・「YYMMDD(日付)_製品規格_○○社」のように、日付や内容が明快にわかるもの。
・海外の工場に展開する場合には、ファイル名は英語にしておく。
OEMと一緒にモノを作るときには、文書化がカギです!(僕は何回も痛い目にあいました・・・)
品質が悪いケース③:工場の品質管理体制ができていない(OEMの問題)
3つ目は、OEMの品質管理の体制が十分でない場合。
何度も同じような品質トラブルを繰り返したり、是正処置や予防措置の設定ができなかったり、決められた手順でのオペレーションができない企業というのは、残念ながらあるものです。
こういったOEMに対して、品質保証部門としては継続的な是正指示をしたり、定期的な監査をして、品質カイゼンを図っていきます。
このようなカイゼン活動はすぐに結果が出ないことがほとんどですが、途中であきらめてしまうと「品質保証部として容認された」と思われてしまうので、割り切って淡々とやっていきましょう。
割り切りが大事です。(←ココ大事です)
最後に お客様にとっては、「OEM生産かどうか」は関係ない
OEMの企業体質や、品質管理のレベルが低すぎてなかなか改善につながらない!
OEMのせいで・・・!
こんな風に思ってしまうこともあるでしょう・・・。
一方で、OEM工場が起因による製品の品質トラブルであっても、お客さまには関係がありません。
「OEM工場で作ったものなので、本来の品質を維持できませんでした」は通用しないのです。
製品の品質で不具合があったときに、被害を受けるのはお客さま、そしてブランドイメージです。
全ての製品が同じ品質である必要はありません。
ですが、それぞれに求められる品質を満たす必要はあります。
社内・社外とのコミュニケーションも含めて、品質をマネジメントしていくのが品質保証部門の腕の見せ所だと思います。
コメント