食品工場の監査で意外と見落としがちな確認ポイント【品質保証】

品質保証・品質管理

工場の監査を担当することになったのだけど、いったい何をどのように確認すればいいの?

こういった疑問をお持ちの新任の監査員の方も多いのではないでしょうか?

本日は食品工場の監査で意外と見落としがちな確認ポイントをご紹介します。

監査員の立場として注意すべきこと

まず初めにお伝えしておくと、1回の監査だけで工場の品質・製造管理体制をすべて確認するのは不可能です。監査は工場として問題がないかどうかの判断材料の一つです。

一方で、品質保証部門が監査をしている工場なのだから問題ないだろう、と思う社内関係者も多いです。

そのため監査員としてやるべきこととして、以下が特に重要です。

  • 品質保証のうえで重要なポイントは必ず確認すること。
  • 監査報告書の中で、確認できたことを明記すること(確認したこと、監査の中では確認していないことの明確な区別)。
  • 推察ではなく、あくまで確認できた事実をもって判断すること。

これらは品質保証部門として「品質を保証すること」に加え、サラリーマンとして「工場に起因する問題」をすべて押し付けられないようにするために、とっても重要です。

意外と見落としがちなポイント

監査の実務経験者として、ここからは具体的に食品工場の監査において意外と見落としがちなポイントを紹介します。

再生品のトレーサビリティ

食品工場では、なるべく原料のロスを減らすために、いわゆる「再生品」を

再生品とは、例えば

  • 割れてしまったチョコレートの製品を再び溶かして再度、原材料として使用する
  • 焼く前のクッキーの生地のうち、クッキー型からはみ出した部分を回収してもう一度、原材料として使用する

といったようなものです。

再生品は、リワーク品や戻し品とも呼ばれます。

こういった再生品においても、トレースがとれるように管理しているかどうかも確認が必要です。

例えば上述したクッキーの例で、小麦粉に問題があった場合、再生品を使用した製品にも影響が発生してしまうからです。

再生品がどのロットに使用されているのか、を製造記録帳票から確認できる体制であるかどうかは食品事故の危害を最小化するために、確認すべき重要なポイントです。

開封後の原材料の取り扱い

原材料メーカーから買ってきた原材料ですが、一回の生産ですべて使いきらずに次回まで保管しておく場合もあります。

  • 開封後はどの程度の期間、使用して可能なのかどうか
  • 開封後の保管方法はどのようにすべきか

などが論理的に検証・確認され、手順が決まっているかどうかも確認した方がよいです。

砂糖などはもともと品質低下のリスクが低く賞味期限が設定されていない場合がありますが、
香料などは開封後にアルコール分が飛んでしまい、経時で香りが変化してしまう事があります。

開封前は常温保管可能だけれども、開封後は密栓可能な容器で冷蔵保管する、などの保管方法の検討が必要です。

補足:
開封後の賞味期限の設定はとても難しいです。
原材料メーカーは開封後の品質まで保証してくれないことがほとんどだからです。
そのため、工場や品質保証部門が開封後の賞味期限や保管方法を検討しなくてはなりません。
「微生物・理化学(物性)・官能(味・香りなど)を総合的に評価し、開封後○○日までは使用可能」、といった形で評価することが一般的です。

殺菌機器の温度測定機器の校正

食品における殺菌工程はCCPであることがほとんどです。

そして殺菌の強さ(殺菌の力価)は、殺菌温度×殺菌時間によってコントロールします。

そのため、殺菌機器における温度計が定期的に校正されているかどうかは、食品事故を防ぐためにとても重要です。

クレームへの対応の反映状況

品質不良によってクレームを受けた際に、工場で再発防止策を検討します。

この再発防止策がしっかりと工場の運用の中で浸透しているかどうかの確認をしましょう。

再発防止策として「工場の現場にマニュアルを設置しました」などと報告しておきながら、実際に監査で工場に行くとどこにもマニュアルが無かったり、現場の作業員の目につかないところに置いてあって誰も見ていない(=再発防止策として意味をなしていない)といったケースが多々あります。

工場が再発防止策として報告してきたことが、本当に現場で守られているかを確認しましょう。

補足:
工場は品質だけでなく、生産性(生産能力)も維持・向上していかなくてはなりません。
(品質への対応ばかりだけではいけません。)
そのため、生産効率を向上するために、運用を見直し再発防止策として設定した運用が変わっていることも考えられます。
運用が変わることは問題ではないので構わないのですが、運用が変わることで品質も維持できているかどうかは確認しましょう。

検品場所の照度

検品をするような場所で、十分な照度(照明の明るさ)が保たれているかどうか確認してみましょう。

JIS9110 照明基準総則では、一般的な視作業は500ルクス以上、細かい視作業は750ルクス以上が目安となっています。

明るければ細かい欠点も確認しやすくなるので、見逃し(流出)を防ぐことができます。

さいごに

本日は食品工場の監査で意外と見落としがちなポイントをご紹介しました。

品質保証として、監査という機会を通じて品質リスクを効率よく低減していきたいですね。

この記事が参考になったと思ってくださった方、他にも品質保証に関する記事を書いていますので、ぜひ読んでみてください!

もっと品質保証がリスペクトされる日が来ますように。

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